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五行歌・詩

2024.12.06

詩のボクシング

20年以上も前になるが、NHKで「詩のボクシング」という番組を放映していたことがある。赤コーナーと青コーナーにわかれて、二人が順番に詩を朗読し、勝ち抜き戦をやるのだ。即興の詩をつくるときもあった。

高校生が競うときもあれば社会人のときもある。ことばの力、とくに声に出すことばの力を感じることができて面白かった。

YouTubeでその動画を見つけた。なかでも、先日亡くなられた谷川俊太郎とねじめ正一の戦いは面白かった。黙読したものより朗読したほうが詩がいきいきと立ち上ることが分かる。目で読むのと、耳で聴くのとは大違いなのだ。

朗読は、声の質、スピード、大小などが混ざり、読む人の人格までが表れる感じがする。


詩のボクシング1~7

3から聴いても面白い。「ねじめのけじめ」がいい。
とくに7の即興詩が最高。

 

五行歌は
歌というぐらいだから
声に出して読む
あるいは歌ったら
いいのかもしれない

2024.12.05

おせっかいおばさん

未婚の人が
ふえている
あの
おせっかいおばさんは
どこへ


中国も少子化
一人っ子政策から
三人っ子政策へ?
そんなこと
言ったってねえ

2024.12.02

谷川俊太郎の詩

先日92歳で亡くなられた谷川俊太郎さんの動画をいろいろ見た。ご自分で朗読をされているのが多く、りっぱだなと思った。だいたい現代詩は難解で、独りよがりなものが多いと思っている。ところが谷川さんの詩はおそろしく分かりやすい。それでいて深い意味があったりするから油断できない。とにかく、やさしい言葉をつかって書いているし、音楽のようにリズミカルだ。全部ひらがな表記の詩も少なくない。

 

「自己紹介」 谷川俊太郎

私は背の低い禿頭の老人です
もう半世紀以上のあいだ
名詞や動詞や助詞や形容詞や疑問符など
言葉どもに揉まれながら暮らしてきましたから
どちらかと言うと無言を好みます

私は工具類が嫌いではありません
また樹木が灌木も含めて大好きですが
それらの名称を覚えるのは苦手です
私は過去の日付にあまり関心がなく
権威というものに反感をもっています

斜視で乱視で老眼です
家には仏壇も神棚もありませんが
室内に直結の巨大な郵便受けがあります
私にとって睡眠は快楽の一種です
夢は見ても目覚めたときには忘れています

ここに述べていることはすべて事実ですが
こうして言葉にしてしまうとどこか噓くさい
別居の子ども二人孫四人犬猫は飼っていません
夏はほとんどTシャツで過ごします
私の書く言葉には値段がつくことがあります

 

「かっぱ」 

かっぱらっぱかっぱらった
とってちってた
かっぱなっぱかった
かっぱなっぱいっぱかった
かってきってくった

 

「さようなら」 

さようなら
きょうたべた さんどいっち
さようなら
きょう あるいたみち
ひがくれてゆく
 
さようなら
まだ おこってる おかあさん
さようなら
もうききおえたうた
もうすぐよるがくる
 
さようなら
きょうみあげた ひこうきぐも
さようなら
きょう ころんだわたし
また あえるかしら

2024.11.30

木が痩せた

木から
椋鳥の群が
飛び去った
あっという間に
木が痩せた

きのうのよみうり五行歌欄の特選歌だ。常連の志村さんの作品で、じつにうまい。ムクドリは群れをなし、街路樹のユリノキなどに集まって眠る。葉が落ちたら別のところにねぐらを探すだろう。

枯れ木に止まったムクドリの大群が飛び去ったら、いっぺんに木が痩せて見える。そうだ、その通り。情景が目に見えるようだ。とくに木が痩せたというのがいい。こんな歌が書けたらいいなと思う。

2024.11.21

しんゆり五行歌会(11月)

                 きさき(一席)
願い
望むものは
いつでも
幸せだと思える
心を持つこと

 

                 市田(二席)
顔や手の皺は
年々深く
脳の皺は
年々浅く
記憶は素通り

 

                 えみ(三席)
小春日の公園
降り積もった
銀杏の木の下で
老夫婦が寝そべっている
一枚の絵のようだ

 

                 熊田
老年の誕生日は
ここまで生きたという
お祝いの日 でも
残りの人生思う時
本人の心は矢張寂しい

 

                 内藤
標識の下に
置かれた
菊の花束
秋の風が
やさしく

 

                 のぶ
義母が逝き
女中勤めも終わり
これより先は
妻と母として
生きたしと娘の言う

 

                 京子
ロマンスカーの
連結部の切り離しを
小田原駅で見る
全部自動
夢中で見てしまう

 

                 リプル
淡い色で
描かれた
ちひろの子どもたち
その目に
笑いはない

2024.11.08

口語短歌

先々週の日曜日の朝だったと思う。NHK短歌で枡野浩一さんが面白い短歌を紹介していた。「いただきます、ごちそうさま」という題で、応募してきたいくつかの作品だ。

 

死ぬまでに
一度でいいから
「ごちそうさま」
できれば「おいしかった」
と言ってよ

 

幸せに
なれるものなら
なってみな。
いただきますも
言えないくせに

 

口は無料 タダ
言っておいたら
よかったな
「いただきます」も
「ごちそうさま」も

 

番台へ
「ごちそうさま」と
言いそうで
言わないように
気をつけて出る

 

これは57577の文字数だが、それ以外は五行歌と同じだ。五行歌は文字数は問わない。この歌も口語で会話体だから分かりやすく簡潔でいい。ごくありふれた状況や思いを素直に詠んでいる。「もののあはれ」の片りんもないが、クスッと笑ってしまいそうな歌だ。こんな歌が書けたらいいなと思った。

 

そのままを
五行に書けば
いいんだよ
気取らなくても
うまくなくても


あらま、五七調になってしまった。五七調のリズムがうつっちゃった。

2024.11.06

五行歌誌投稿歌(11月号)

雀の急降下は
ほとんど落下
寸前に軟着陸
なんという
やつだ!

 

鉄路の
先に
沈み行く
晩夏の
日輪

 

猛暑だ
外仕事の人は
みんな
ファン付き上着で
命をまもる

 

とにかく
湿度がいけない
じめじめ
べとべと
だらだら

 

日本人は
投資が下手
みんなアメリカに
吸い取られる
ウォール街に

 

長生きは
ありがたいが
医療の進歩で
死ぬに死ねない
人も

2024.10.18

しんゆり五行歌会(10月)

                  きさき(一席)
結果
あながち外れていなかった
妻オンナの提案を
まずは否定する
夫オトコのバカげたプライド

 

                  室川(二席)
昔は全部
頭の中にメモ
今は部屋中にメモ
メモが書けるうちは
まだ大丈夫


                  ひゅー(二席)
雑草は強いなぁ
ああならにゃ いけんなぁ
草取り終えて
しみじみ呟く
九十二歳のお義父さん

 

                  のぶ(三席)
ジャガイモの皮をむく時
妻の背中が
丸くなっている
ミレーの描く
農夫のように

 

                  内藤
十六夜の月
墨をこぼすかのように
雲が流れる
汚されまいと
月はさらに煌々


                  えみ
空いっぱい広がった
真綿雲
空の婆さまたちは
冬布団作りに
大忙しだろう

 

                  京子
昼寝
貧乏ゆすり
ため息
昭和のダメなことが
令和ではおすすめに



                  リプル
まいにち書いたラブレター
その返事の山を
読み返す
あの頃の あれは
一体なんだったのだろう

2024.10.08

投稿歌(五行歌誌10月号)

今日、約10日ぶりに治療室にやってきた。

外は雨。ずっと曇りだったように思う。あの暑い夏はどこへ行ったのやら。ドジャーズとパドレスのポストシーズンは1勝1敗で、きょうは休憩日。石破政権、波乱の船出。ウクライナも戦争はガザも収まらない。

腰の手術のあとは順調で、今日はじめて術後の診察を受けた。内視鏡の手術なので傷も小さく、痛みもない。しばらくはシャワーだが、無理をしなければふつうの生活にもどれるだろう、と先生。いずれ詳しく報告を書く予定。


とりあえず『五行歌』誌10月号に投稿した歌を載せたい。

 

フランス人が
柔道に勝ち
日本人が
フェンシングに勝つ
オリンピック

 

どれほど厳しい
練習を
重ねたことだろう
メダリストの
つぶれた耳

 

降る降るといって
けっきょく空振り
まわりは大雨なのに
多摩区は
かみなり一発だけ

 

オクラの花は
いろっぽいね
薄クリーム色に
底の濃いえんじが
そそる

 

赤とんぼが
竹の杭に
止まってる
首をかしげ
何を考えているんだか

 

赤とんぼは
あんがい
人懐こい
私の指先にも
とまる

2024.09.24

リプルの五行歌

ときどき患者さんに私の五行歌集『リプルの歌』をあげている。もう在庫が少なくなってしまったが、治療室においておくと「わけてください」なんて言われることがある。先日、二冊買ってくれた方がみえて、バッグに入れてときどき読んでいます、面白いです、なんて言ってくれる。別の人は、枕元に置いておき、寝る前にいくつか読んでいます。よく眠れます、なんてね。

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その人のように
生まれ育ったら
その人のように
振る舞うだろう
人には訳がある    

100頁

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