山崎放代の歌
甲州の柿はなさけが深くして女のようにあかくて渋い
卓袱台の上の土瓶に心中をうちあけてより楽になりたり
しあわせは朝の寝覚めにもどかしく放つくしゃみの中にありたり
かくれんぼ鬼の仲間のいくたりはいくさに出てそれきりである
歌を作れ歌を作れと呼ぶ声が巌とともにとどろきせまる
さいわいは空の土瓶に問いかけるゆとりのようなもののようなり
このようになまけていても人生にもっとも近く詩を書いている
なるようになってしもうたようである穴がせまくて引き返せない
このように生きているのを何となく心苦しく思わないでもない
砲弾の破片のうずくこめかみに土瓶の尻をのせて冷せり
一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております


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