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2008.05.20

求めない

加島祥造さんの詩集『求めない』(小学館、1300円+税)を読んだ。読んだといっても、各ページに、3、4行の詩が書かれているだけだから、すぐ読み終えてしまう。たとえば、こんなぐあいだ。

求めない――
すると
簡素なくらしになる

求めない――
すると
いま持っているものが
いきいきしてくる

求めない――
すると
体ばかりか心も
ゆったりしてくる

加島さんの話は、以前「ラジオ深夜便・こころの時代」で聞いたことがある。そのときは『老子』の英訳についてだったが、この詩集にも老子の思想が流れている。

人間は何かを求めないでいる、ということはできない。しかし衣食住があるていど満たされたら、それ以上を求めるのはほどほどにしたほうがいい。求めてばかりいると自分を見失う。求めないでいると、自分の中心がわかり、ものごとに動じなくなる。心が豊かになる。そんな詩集である。足るを知るという、お釈迦様の教えにも通ずる。

下重暁子さんの『持たない暮らし』(中経文庫)も読んだが、こちらもシンプルライフ、スローライフを目指そうという内容だ。ものを持たないことの自由さを訴えている面では似ている。もっとも、下重さんは「いいものはとことん求める」などと言っているから、加島さんほど徹底してはいない。こちらのほうは、ちょっと立ち読みする程度でいいだろう。

こういう本が売れるのは、ものが豊かになり、生活が便利になってゆくのに、一向にしあわせを感じられない現代を象徴しているかのような気がする。求めるから失望し、求めるから裏切られ、求めるから苦しむ、ということが分かっていないのだ。

四国巡礼をした人がインタビューに答えていたのを思い出す。はじめはカメラや本やテントなど、いろんな物をリュックに詰めて背負って歩いていたが、重くてたまらないのでだんだん荷物を減らしてゆき、ついには必要最小限のものだけにした。そうしたら、からだも心も軽くなり、これが自由なんだと悟ることができた。そんなような話だった。


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コメント

IT長者の方には、この様な思想が多いと想います、頭が良いので富を持ちながら、思考は求めないのでしょう、しかしそれがまた求める原動力となる事が、理解できていると想いました、
求めないとは、脳を空腹にしておくこと、または脳内に何時も空間を残しておくこと、と彼らは理解していると想いました、私など常に脳が満タンなので、一寸脳内が空腹に成ると、直ぐに食べ物を求めて、求め求めてしまいます、

私は加島祥造さんの詩集をまだ読んでいませんが、求めない事の、大切さは少し理解できますが、邪念の多い私では千里の道ですが、昇るべき道、大切な事と想いました、

投稿: 10月のマルコ | 2008.05.20 21:11

「捨てなければ得られない」という話を聞いた事が
ありました。
下重暁子さんの『持たない暮らし』は私も興味があって
読んでいますが、題名と内容が違う感じがしてストップ
しています。
「足る事を知る」は私にとって戒めの言葉です。

投稿: ミモザ | 2008.05.20 21:25

★マルコさん、
求めないというのは、必要以上に求めないという
意味だと取ればいいでしょう。(^-^)
まったく求めないということは無理な話ですから。
求めない分、こころが豊かになり、神経的にも
リラックスできるようになるというのです。
それはまた、とらわれないということにも通じます。
少しでも、そういう方向に進めたらいいなと思います。

★ミモザさん、
捨てなければ得られないも本当ですね。
空のところには無限に入ってくるし、
満杯のところにはもうそれ以上入らない。

そう、下重さんは始めは持たない、求めないに
通じる話をしていますが、後半はちょっとおかしい。

求めない、幸せすら求めない、もうすでに幸せは
ここにあるから。いい話ですね。(^-^)

投稿: ripple | 2008.05.20 22:32

本当に物や情報にあふれた時代ですよね。私なんて、欲張りなので、何もかも欲しくて、本を買ったら安心して読む前に次の本を買ったり、切抜きばかりたまってしまうし、毎年洋服を買って、前のも捨てられなくてあふれているし、自己嫌悪です。
シンプルな生活はいつも憧れです。今は、何か、いつもあせっていて、不安な気持ちがあります。
心も物も整理して、本当に何が必要かを見極め、欲望を抑えなくてはと思っているのですが。
どうすれば、「求めない」心境になれるのでしょうか。

投稿: めろん | 2008.05.20 23:32

★めろんさん、
難しいですね。差し当たって、買おうとしている
ものが本当に必要なものかを落ち着いて考えてみる、
というのがいいのではないでしょうか。
流行やブランドに流されないというのも大事でしょう。

福沢諭吉の福翁自伝を読むと、むかしは本が貴重で
簡単に手に入らなかったから、人から借りて蝋燭の
灯りで夢中で筆写したそうです。筆写するだけで
すごい勉強になったことでしょうね。

本は買わないで図書館で借りることにしたらどうでしょう。
物が多くなると、頭がそれらに乱され、こころを落ち着け
て考えるという時間がなくなってしまいます。

求めることを、意識的に少なくしていきましょう。
これはわたし自身に言っていることであります。(^-^)

投稿: ripple | 2008.05.21 23:09

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