魚の目
「行く春や鳥啼き魚の目は泪」、というのは、芭蕉の『奥の細道』の最初の句だ。行く春を惜しんで、鳥が悲しそうに啼き、魚の目にも泪が見えるようだ。そんな意味で、芭蕉は未踏の地への旅立ちの気持ちを重ねたのだろう。これは陰暦3月27日、陽暦5月16日だそうだから、もう初夏のことだ。おだやかな春の陽気が暑い夏に移ってゆく、それがもの悲しかったのだろうか。
話はまったく変わるが、去年の10月下旬に、魚の目が痛くてうちの治療室に来た人がいる。70歳の女性で、左足の親指の付け根の裏に分厚い魚の目ができていた。整形外科に行ったら「切る」といわれたが、なんとかならないかというのである。大きさは十円玉を楕円にしたような形で、カチンカチンに硬く、押すと痛がる。
魚の目は何度か治療したことがあるが、いちばんいいのは直接灸をすえることだ。時間はかかるが、艾で根気よく魚の目を焼き、その部分を炭化させてしまえば、だいたいポロリと取れてしまう。魚の目は仮死状態だから、お灸をすえても熱くない。小指の頭ぐらいの艾を富士山のように立てて、すこし熱さを感じ始めるぐらいまで焼く。一回の治療で、10壮から20壮ぐらいのお灸をすえる。
大きな魚の目 大きなお灸をすえる 炭化する
週2回のペースで1ヶ月ほど治療すると、魚の目の痛みが取れ、まわりが柔らかくなってきた。少し炭化した部分を削りとり、さらに1ヶ月ほどすえた。お灸の他には骨盤矯正や左下肢の坐骨神経の治療もしている。その後しばらく、来院しなくなった。
その患者さんが、5日前に首が痛いといってやってきた。最後に魚の目の治療をしてから3ヶ月がたっている。こちらから切り出す前に、向こうから「おかげさまで、魚の目はきれいに取れました」という。なんでも、少しずつ炭化した部分を剥ぎ取っていたら、1月の終わりにはきれいになったそうだ。わたしが触ってみると、ほんのすこし点状に硬いものがあるが、まあ完治したといってもいい。患者さんの喜びは、わたしの喜びでもある。
炭化した部分を少しずつ剥がしてゆくと、きれいな皮膚になる。

コメント
魚の目、先生の腕の見せ所ですね、鍼灸は皆さんが効果が有ると思っても無い、病気を治す力が有りますね、今後も紹介お願いいたします、
我治療室は、自律神経系の疾患患者多数見えます、専門ですので、
投稿 10月のマルコ | 2008.03.31 06:51 午後
「患者さんの喜びは、私の喜びでもある」いいなぁ、このお言葉。私は左肩を壊して、接骨院に通っています。
おととしは右肩でした。首も肩も弱いです。近くなら通ったのになぁ・・・
「春なのに肩を壊してわが涙・・・」
投稿 かおる | 2008.03.31 08:53 午後
★10月のマルコさん、
きのうは痔の患者さんに百会(ひゃくえ)のお灸をしました。
頭の天辺のお灸が肛門に効くのですから驚きですよね。
中国の病院を見学したときは、痔の患者に対して、舌下に
生理的食塩水を注射していました。即効性があります。
自律神経系の疾患も多くなりましたね。
★かおるさん、
すべてがうまくいく、というわけではありませんが、
往々にして感ずる喜びです。
現代人は、運動不足、食べすぎ、冷え、神経性ストレス
が原因の病気が多いですね。まずは、からだを動かしま
しょう。
お花見や肩の痛みを忘れけり
投稿 ripple | 2008.04.01 09:22 午前