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2006.08.03

生きて死ぬ智慧(2)

sakuraさんの質問に答えることが難しいので、本文の一部と「あとがき」の後半部分をここに引用させてもらいますね。〔原本:柳澤桂子著「生きて死ぬ智慧―心訳・般若心経」、小学館〕

お聞きなさい
私たちは 広大な宇宙のなかに
存在します
宇宙では
形という固定したものはありません
宇宙は粒子に満ちています
粒子は自由に動き回って形を変えて
おたがいの関係の
安定したところで静止します

お聞きなさい
形のあるもの
いいかえれば物質的存在を
私たちは現象としてとらえているのですが
現象というものは
時々刻々変化するものであって
変化しない実体というものはありません
実体がないからこそ 形をつくれるのです
実体がなくて 変化するからこそ
物質であることができるのです
(p6-7)

「あとがき」より(p43-44)

さて、「般若心経」について、どうしてこのような現代語訳が出てくるかといいますと、私は次のように考えました。これは私の解釈であって、絶対に正しいというものではありません。みなさんにはみなさんの解釈があるのだと思います。

私は、釈迦という人はものすごい天才で、真理を見抜いたと思っています。ほかの宗教もおなじですが、偉大な宗教というものは、ものを一元的に見るということを述べているのです。「般若心経」もおなじです。

私たちは生れ落ちるとすぐ、母親の乳首を探します。お母さんのお腹の上に乗せてやるとずれ上がってきて、ちゃんと乳首に到達します。また、生まれたときに最初に世話をしてくれた人になつきます。その人が見えなかったり、声が聞こえないと泣きわめきます。このように、生れ落ちた時点ですでに、ものを自己と他者というふうに振る舞います。これは本能として脳の中に記憶されていることで、赤ちゃんが考えてやっていることではありません。

けれどもこの傾向はどんどん強くなり、私たちは、自己と他者、自分と他のものという二元的な考え方に深入りしていきます。元来、自分と対象物という見方をするところに執着が生まれ、欲の原因になります。自分のまわりにはいろいろな物があり、いろいろな人がいます。

ところが一元的に見たらどうでしょう。二元的なものの見方になれてしまった人には、一元的にものを見ることはたいへんむずかしいのです。でも私たちは、科学の進歩のおかげで、物事の本質をお釈迦さまより少しはよく教え込まれています。

私たちは原子からできています。原子は動き回っているために、この物質の世界が成り立っているのです。この宇宙を原子のレベルで見てみましょう。私のいるところは少し原子の密度が高いかもしれません。あなたのいるところも高いでしょう。戸棚のところも原子が密に存在するでしょう。これが宇宙を一元論的に見たときの景色です。一面の原子の飛び交っている空間の中に、ところどころ原子が密に存在するところがあるだけです。

あなたもありません。私もありません。けれどもそれはそこに存在するのです。物も原子も濃淡でしかありませんから、それにとらわれることもありません。一元的な世界こそが真理で、私たちは錯覚を起こしているのです。

このように宇宙の真実に目覚めた人は、物事に執着するということがなくなり、何事も淡々と受け容れることができるようになります。

これがお釈迦さまの悟られたことであると私は思います。もちろん、お釈迦さまが原子を考えておられたとは思いませんが、ものごとの本質を見抜いておられたと思います。
現代科学に照らしても、釈尊がいかに真実を見通していたかということは、驚くべきことであると思います。


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コメント

柳澤さんの事をインターネットで調べました。
何と息子と同い年。この年で、、とタダタダ驚きました。
これから本を買って読んでみたいと思います。
柳沢さんを教えて下さったrippleさんに感謝申し上げます。
有難う御座いました。

投稿: sakura | 2006.08.03 20:05

科学者の眼で見たいい本だと思います。

投稿: ripple | 2006.08.04 09:06

おはようございます♪
お釈迦様は今風に言えば、超天才だと思います。
柳澤さんのことは「素敵な女性」のカテゴリーで
以前に取り上げた事があります。
柳澤さん御本人の悟りにとても興味がありました。
彼女は(苦行に近い)求道者だと思います。

投稿: なっちのママ | 2006.08.05 08:43

わたしも柳澤さんが言ったことばで、
「痛がっている私がいる、私がいなければ痛みがない、
だから私がいることが問題なのだ、私がいなければ痛み
はないのだ」というのが印象に残っています。
とにかく般若心経が分かりやすくなりました。

投稿: ripple | 2006.08.05 10:06

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